飄々楽住

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マクラーレンF1チームに学ぶ、地方創生にダサすぎるものが多すぎる理由

今回はF1と地方創生を引っ掛けたはなし。F1(マクラーレン)のダサさから学ぶ、地方創生には何故ダサいモノが多いのかという示唆です。

本記事のまとめ

  1. わかる部分で駄目な意思決定をする組織は要注意
  2. 会社のブランドは「一挙手一投足」に意味を持たせるべき
  3. 地域のブランドづくりも、考え抜ける組織の先にしかない → 組織力が無いが故にダサくなる

わかる部分で駄目な意思決定をする組織は要注意

マクラーレンはダサくなった

セナ以降のマクラーレンの全盛期、1998年にミカ・ハッキネンが2連続チャンピオンを取った頃のマクラーレンのロゴとマシンを見てみましょう
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ロゴのコンセプト、カラーリングまで統一感があり、素直に格好いいと思えるマシンです。このロゴとカラーリングからは、「速さ=カッコよさ」という明確な統一されたメッセージや力強さが感じられます。
好みはあるにせよ、多くのファンが「格好いい」と口をそろえる、今のMcLarenブランド価値の源泉がココにあります。

一方2017年のマクラーレンはどうだったでしょうか?
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ロゴは適当なフォントの横並び、マクラーレンなのかホンダなのか分かりません。しかもホンダはホンダで全くホンダらしさの感じられないフォント感。トレードマークのスウォッシュを排除してしまっているのも謎でした。
更に酷いのはマシンのカラーリング。デビュー時から酷評の嵐。参戦して全く結果が出ずに撤退したスパイカーや、財政難で破綻した末期のアロウズを彷彿させるデザインは、将にテールエンダーを象徴するが如くでした。

f1-gate.com

結局2017年のマクラーレンは惨敗に終わった

2017年のマクラーレンホンダはチームランキングが10チーム中9位と、5年程前にチャンピオン争いをしていたとは思えない程の低迷ぶりでした。私はこの低迷は、この駄目なロゴやカラーリングの決定をしてしまうマクラーレンの経営陣にこそあったように思います。
もちろん、ホンダと安易な契約を結んでしまったり、ホンダの開発が遅れているのに対策をせずに2015年からのパートナーシップ契約に突入してしまった、その体たらくもこの辺りに見え隠れします。結果的に、マクラーレンはホンダとのパートナーシップの3年間でブランド価値を大きく落とす事となりました。

駄目な決定をするのにはそれなりの理由がある

少し古い記事ですが、とても面白い事が書かれています。

blog.sakanoue.com

一般論ですが、デザインが相当に違和感ある仕上がりになる場合、だいたい大きくわけで以下のような問題があることが多いです。

経営側が、素人であるに関わらず、色々勝手なことを言って変えさせる。
そして、プロであるディレクターやデザイナーが不本意にも、言う事を聞かなければならなかった。

OR

ヘンなのに、皆違うとわかっていても、途中で止めることができる人がいない。

一般的に、そのあたりが主な原因です。

つまり、そういうことが起きる時には

1.
専門職(プロ)からの助言に耳をかたむけない雰囲気

2.
ヘンだとわかっても、言える人がいない組織の雰囲気

将に、マクラーレンはそんな雰囲気に支配されていたのではないかと思っています。

会社のブランドは「一挙手一投足」に意味を持たせるべき

ここからは、F1の話ではなくて、教科書どおりの一般論を語ります。

考え抜いた先にしか、ブランドの価値は出てこない

神は細部に宿るという言葉があります。本当に細かい事を徹底的に仕上げたその先に、神々しさが現れるという事です。細部にこだわりは、とても難しく、そのことに精通し、一つ一つの事に真剣に考えられていないと、こだわり抜く事は出来ません。
「一体何のためにやっているのか」「拘った先に何を伝えたいのか」「これをこだわる事でどんなことが生まれるのか」本気で考え、やり抜いた先に神は宿り、それがブランド価値になります。

何のためにやっているのか、何処を目指すのか、細部に意味を与えるのが経営者の仕事

さて、このブランドを作るにあたって、「一体何のためにやっているのか」「拘った先に何を伝えたいのか」を明確にするのが経営者やリーダーの第一の仕事です。これを現場に任せると、ともすると、目的を失い、ただ何となく細かいことを気にしてしまう現場が生まれます。経営者やリーダーの思い如何に現場に伝播させるかで、目的や目標をブレさせることなく、細部に神を宿すことが可能になります。

現場が責任とプライドを持って細部にこだわるからこそ生まれる意味のあるカッコよさが生まれる

リーダーが想いを伝えるだけでは、現場は空回りすることも多々あります。「ふわっとしたことしか言わない」「明確な指示をくれない」こういう声は必ず現場から出てきます。また、リーダーが「ああしろ」「こうしろ」と専門的な現場に介入しすぎると、素人判断で出鱈目な意思決定がなされます。それ故に、リーダーは、優秀な人材に責任と権限を与えて、現場がプライドを持って目的と目標に向かって考え、やり抜ける組織を作る必要があります。リーダーだけでは達成しない神が宿る専門の境地がそこに生まれます。

目的と目標に共感して、細部を拘れる人材を育てる

とはいえ、なかなかそんな考え・やり抜ける優秀な人材、特に中小企業や地方には集まりません。また、いきなり完璧に細部まで拘れる人は都会に行ってもそうそう居ません。それ故に、リーダーは、責任と権限を渡すのみならず、その人の人生感や情熱に耳を傾け、積極的に技術や才能を開花させるように誘導して上げる必要があります。リーダーによる誘導と育成があって、はじめて、一般的な人材が一挙手一投足に意味を与えていく貴重な人材となっていきます。

地域のブランドづくりも、考え抜ける組織の先にある

ココまで書いてきた、考え抜く組織のポイントは3つあります。

  1. 目的・目標とその伝播
  2. 積極的に現場に責任と権限を与える
  3. 想いや熱意を元に人材を育てる

このような組織を元に地域づくりが出来る所は、色々失敗はするかもしれませんが、最終的には強く、大きなブランドを手に入れる可能性が高いと思われます。決して、地元の有力者が目的も無いまま事細かに指示命令したり、行政が勝手にやることを決めていたり、地元の宿泊施設やサービス事業者にすべてお任せでは、絶対に地域のブランドは出てきません。ともすれば、前述のマクラーレンF1みたいに、出鱈目な意思決定がされてしまい、大きく地域の価値を落とすこともありえます。言い換えれば、地方創生のネタがダサいのは、行政にせよ、地域組織にせよ、DMOにせよ、考え抜ける組織になっていないからではないでしょうか。

「あんなことをしよう」とか「こんなことがしたい」と、やることばかりが優先する地域づくりですが、如何に考え抜ける組織を作るのかという視点で考えた方が、上手くいくのではないか、そんな気がしている昨今でした。