悪徳SNS対策業者、そしてネット選挙と自民党総裁選
一応私、元大手の広告ポータルの運営をしていた手前、SEOとかSNS対策とかWEBプロモやWEBマーケティングにはそこそこ精通している身であります。そんな私が、最近Twitterをやっていて思うこと、フェイクニュースや悪徳SNS対策業者をどう対処するか。特に政治の世界では、大問題なのかと思い出したので纏めておきます。
本記事のまとめ
- WELQ問題は、リライトツールやbotによる大量記事生成という「技術」を活用していた
- Twitterを始め、SNS対策にこそリライトツールやbotでのステルスマーケティングは有効
- 特に政治の世界では、お金で買ったステルスマーケティングなどは厳に禁止されるべき
WELQ問題は、リライトツールやbotによる大量記事生成という「技術」を活用していた
WELQ問題って何?
WELQとは、DeNAが運営していた医療・健康系の情報のいわゆる「まとめサイト」で、今は閉鎖されています。
その閉鎖された経緯ですが、2016年の11〜12月頃他サイトからの画像や文章の転用が問題になり、世間を大いに賑わせました。
当時SEO(検索エンジンで、検索順位を上に上げる方法)界隈で流行っていたネタが、以下のようなものでした
- 該当キーワードの検索順位1〜10位くらいまでの他ページの情報を調べ上げる
- 項目を列挙する(例:「お尻 痒い」というキーワードならば、「原因は何か」、「効く市販薬は何か」、「疑われる病気は何か」など)
- 項目をすべて網羅したページを作成する
- 上記の様なページを大量に作成する
これを安価でやろうとすると、必然的に文章や画像が盗まれたり、科学的に根拠のない話題も含まれたりし、低品質な情報があふれかえる事になります。
結果、それらが社内で制御ができなくなり、閉鎖に至ったというのがWELQ問題のざっくりとした経緯です。
WELQを支えた技術は出会い系仕込みのリライトツールとbot
では、これらのページをどうやって大量に生み出したかというと、簡単に言うと、そう言う「ツール」を使ったのです。
やまもといちろうさんの記事が非常によくまとまっていますので、一部引用させていただきます。
詳しくは、ご参照いただければと思います。
しかしながら、実際にこの手の記事の量産を担っているのは、だいたいにおいて人間ではありません。「サクラ」であり「肉袋」である、コピペロボットです。
もしも、いまお手すきでしたらこの記事を読み終わった後で「リライトツール」と検索していただければすぐわかります。ネットでは、1万5,000円から高価なもので4万円程度のソフトウェアが売られています。どれも万全なSEO対策、作業時間短縮といった機能が並び、これらのソフトを購入してきちんとチューニングすれば、クラウドワークスなどから提示される執筆のレギュレーションを満たし得るサイトから元の文章をソフトウェアに流し込むだけで、10万種類以上のリライト文章を生み出すことができます。
さらに、これらのシステムを転がすだけではネットで記事を探し回ったり、複数のサイトの記事をつなぎ合わせるなどいちいちマウスをポチポチやらないといけません。なので、コピペとリライト作業をもっと効率化するために「お目当てのキーワードを入れるだけでネットから品質の高い記事をコピーしてきてリライトソフトにぶち込んでくれるBOT」が出回ることになります。その威力で申しますと、BOTとリライトソフトの組み合わせで一日2時間サーバーを転がすだけで300本ほど約2,000文字の記事が出来上がります。
残念ながらBOTは一般には売られていませんが、これらのBOTが流通している背景は、いまはもうなかなか儲からなくなった出会い系サイトの運営技術があります。
簡単にいえば、
- 文体や業体を変えるリライトツール
- 複数のサイトの情報をつなぎ合わせて、自動投稿するツール
の2つを利用して、検索順位上位を支えていたということになります。
Twitterを始め、SNS対策にこそリライトツールやbotでのステルスマーケティングは非常に有効
SNSとWELQで暗躍したツールの相性は「最高」
さて、これらの低品質でともすればユーザーにとって害悪なSEO的な手法はWELQ問題を境目に、若干の落ち着きを見せました。
が、SNSの世界ではどうでしょう。容易にこれらのツールがSNSに持ち込まれていることが想像が付きます。
SNSでは、ある事象に対して、共感している人が多い、共有やいいねが多く、かつ、話題にしている事は社会的なインパクトがあります。
具体的にどういうことかと言うと
- 何万というアカウントが
- 同じ趣旨の事を発信している
- これらの事は「みんな言っているのだからそうに違いない」という心理が働く
これらを人為的に演出するのにまさに、リライトツールと出会い系仕込みのbotが得意とする領域です。
- 同じ趣旨の事を違う文体にするリライトツールを組み合わせ
- 何万というアカウントをbotで自動操作し発信する
非常に簡単に出来てしまいますよね。
ステルスマーケティングは一般的にNG
さて、これらのbotとリライトツールを駆使して何が出来るかというと、SNSを使ったステルスマーケティングが出来ます。
消費者の「他人の評価が気になる」とか「自分では判断がつかないから詳しそうな他人の声を聞きたい」という層を、簡単にいえば「騙す」手法です。
広告というのは、広告主が誰か分かり、かつ、それが広告であることが分かる事が大前提で、それを見た時に消費者が正しく判断出来る環境が望まれます。
ステルスマーケティングは一般的には卑劣な行為とされ、国によっては禁止されています。
因みに、日本では、SNSにおけるステルスマーケティングはグレー領域で、業者が横行しているとされています。
特に政治の世界では、お金で買った偽装擁護などは禁止されるべき
クラウドワークスに出た、保守系blog記事執筆依頼
少し前に話題になったネタですが、SEOの記事大量生成の下請けとなったクラウドワークスに政治主張を煽る記事を生成の仕事の依頼が掲載されました。
憲法9条を改正し、軍隊を保有すること、等の他、何故か、鳥取県出身の政治家の石破茂さんを批判する趣旨が掲載されています。また、Twitterで「石破」で検索をすると、これ人間?と思うアカウントが「石破を首相にしてはいけない」とかを投稿しているのを多数見かけます。この手の物を見るに、あぁやっぱりと思うわけです。実際に政治の世界でもこの手の事はされているのだろうな、と邪推してしまいます。
ポスト安倍的な人は全般的に叩かれる傾向
石破さんに限ったことでなく、野田聖子さん、小泉進次郎さんなどものすごく悪く書かれているような物が相当目につきます。小泉進次郎さんなんてまだ当選4回の若手にも関わらずこの扱い。野田聖子さんも総裁選出馬騒動以降、ものすごいボロカスに叩かれています。苦言を呈している石破さんはともかく、野田聖子さんまでネガティブなコメントであふれかえるというのは少々異常です。なんだかんだで邪推してしまいます。
政治家によるステルスマーケティングは禁止すべき
石破さんの例は非常にわかりやすいですが、お金さえ出せば、この様に政敵をネットで晒し上げる事はとても簡単です。新聞記事などからblogやまとめページを生成し、SNSで拡散し、ネガティブなコメントをつけ、あたかもその人が嫌われている様に作り上げれてしまいます。
もちろんその逆、自身のSNSにポジティブなコメントを大量に買い付け、あたかも「応援してくれている人が多い」ように演出することも可能です。立憲民主党のTwitterアカウントのフォロワーが一斉に増えたというのも、何かしらのbotの狙い撃ちにされているではないかというデータも挙げられています。
ネット選挙が解禁され、SNSの活用が叫ばれる昨今、本来この手のステルスマーケティングを規制する側の政治家が、いの一番に使うような事態は絶対に避けるべきでしょう。プロモーションを広告代理店に丸投げして、「よしなにー」とやっていたら、コメントを大量にbotで生成していたなんてことは本当にやめてほしいです。また、一部支持者が、自費を使って政治家や政党のアカウントにコメントをつけまくる事もあってはならんでしょう。
故に、最低限
- 政治家からの情報発信は、政党公認のSNSアカウントもしくは、公式の個人SNSアカウント、公式HP、公式Blogに限定
- 政治家が対価を支払って、第三者を偽装した記事やSNS投稿を買うことの禁止
- 政治家、及び、政党の公式SNSアカウント、公式blog等にbotを介した応援や政治内容を含むコメント投稿の禁止
くらいの規制は踏み込んでやってほしいと思っていたりします。